花粉症

          (医)末光耳鼻咽喉科
末光 清貞

 スギ花粉症とは、日本スギの花粉によっておこるアレルギー性鼻炎や
アレルギー性結膜炎、アレルギー性皮膚炎を総称していいます。
本来なら暖かくなって気持ちのいい春先に、くしゃみ、鼻水、目がかゆくな
って皮膚もあれる、憂鬱なシーズンでもあります。
この苦しみは実際になった人でなければわからない、と患者さんは言われ
ます。
それほどに重症では苦痛を伴います。
今、国民の約8%の人がスギ花粉症であるといわれています。
1クラス40人の学校の教室で3-4人の患者さんがいる勘定です。
まさに国民病です。
ところが実は30年前には話題にものぼっていませんでした。
われわれが習った医学の教科書にも書いていなかったのです。
当時は欧米で枯草による不明熱、アレルギーがある、としか書いてありま
せんでした。
ですからスギ花粉症は一つの文明病ともいえます。
話題になり始めてわずか20年ほどなのです。
 ではどうして最近になって出始めたのでしょう。
 まずスギの側の問題です。
花粉症をおこすスギは日本スギといわれ、日本固有の種類です。
沖縄と北海道には生息していませんので、沖縄や北海道、また外国では
スギ花粉症はありません。
日本の国土の多くはこの日本スギの林で占められています。特に戦後に
植林として積極的に植えられました。
その木々が戦後50年たって思春期に入り、大量の花粉を出す時期に成
長したのです。
 次に人間側の問題です。
アレルギーは一種の体質ですので、基本的にはもともと生まれついてそ
の情報は組み込まれていたはずです。
しかしスギ花粉に接してもあるレベルに達しないと症状は出ません。
そのレベルを域値といいます。
最近は人間の生活環境が良くなり、それだけ抵抗力が下がっています。
しかし同時にこの域値も下がっているといえます。
夏には冷房、冬には暖房のある部屋ですごし、食生活もたんぱく質を中
心とした欧米型に変わってきています。
それだけアレルギーは出やすくなってるといえます。
では花粉症の治療についてですが、基本的には体質ですので、症状が
でないようにすることになります。
まず、第1はスギ花粉を避けることです。
外出をひかえる。
窓をあけないようにする。
部屋のこまめな掃除をするなどです。
花粉をよけるためのマスク、めがねなども有効でしょう。
外出から帰ったら着替えをするのも一つの手です。
患者さんにとってこのシーズンのゴルフは最悪でしょう。
薬による治療としては抗アレルギー剤などの内服をシーズン開始の2週
間くらい前から飲み初めて、シーズン中飲み続けるとずいぶんおさえるこ
とができます。
アレルギーを直す特効薬はありません。
いろいろな抗アレルギー剤がありますが、体質に合った薬を探すことも必
要です。
ぜひともお近くの耳鼻咽喉科を受診することをお勧めします。